「なんでミューラルに関わる仕事をしているの?」
「WALL SHAREってどういう人がいるんだろう?」
そんな疑問にお答えするべく、WALL SHAREで働く人に話を聞き、ミューラルへの想いや経緯を探るインタビュー企画。第1回はプロデューサーとして企画・運営をしながら、ミューラルを描く建物のオーナーさんへの営業を行う久永連平(ひさながれんぺい)さん。海外生活で見えてきた日本と海外の違い、今後の目標とは。
interviewer&Text おかゆ川
一番の衝撃は、日本って全然色味のない国だなって感じたこと
おかゆ川(以下、O):久永さんがミューラルに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
久永(以下、H):元々ストリートカルチャーが好きっていうのもあるんだけど、一番大きなきっかけは海外に行ったことかな。ワーキングホリデーでオーストラリアに行った時に、アートが盛んなまちが結構あったんだよね。メルボルンには、行政が自由に絵を描いてもいい「ホイザーレーン」っていう区画があって、壁だけじゃなくて置いてあるゴミ箱まで絵が描かれているような場所があったりしたんだよ。
O:人気の観光スポットですよね?私もInstagramで見たことがあります。
H:そう。そこでは毎日絵が更新されていたり、マスターピース(完成度の高い作品のこと)もあったり、すごい場所だったなあ。 その後アジアを旅した時も、まちにミューラルが当たり前にあるなって感じたんだよね。色鮮やかなまちにいっぱい触れてきたからこそ、日本に帰国して一番衝撃だったのは、「日本って全然色味のない国だな」って感じて、よりミューラルに興味を持つようになった。
コロナ禍でも外にミューラルを増やし続けられたワケ
O:そこから帰国後にWALL SHAREに入社された連平さんですが、きっかけは何だったんでしょうか?
H:ちょうど海外から帰国した時、代表の川添がミューラル事業のアイデアを話してくれて、一緒にやろうって誘ってくれたのがきっかけ。日本にはミューラルが少ないと感じていたし、純粋に面白そうだなって。ただ最初は、すぐ社員として雇える枠もなかったから、違う仕事をしながら、休みの日に手伝う形でのスタートだった。
O:別の仕事を掛け持ちしながらのスタートだったんですね。 WALL SHAREの立ち上げはコロナ禍でしたが、その時ってどんな心境でしたか?
H:やばいなっていうのは感じていて、「外に人がいないのに、ミューラルを描いてほしいと思ってくれる人はいるのかな」みたいな焦りはあった。
O:電車内の広告が激減したり、商業施設の休業で外出する機会がめっきり減ったタイミングでしたもんね。
H:けど、おうち時間を活用して、音楽や芸術に触れてみようって思う人が増えていたから、「こういう時こそ、ミューラルじゃない?」っていう変な自信はあったんだよね。実際、コロナ禍だからこそ生まれた企画もあって。
O:たしかにコロナ禍でも、外の壁に描き続けていましたよね。
H:コロナ禍だからこそ、盛り上げていこうみたいな流れもあったんだ。
飲料メーカーのCHILL OUTさんとのプロジェクトでは、コロナ禍で休業している飲食店のシャッターに描いて、店のオーナーさんに壁をお借りする賃料を払いながら、まちの活性化につなげていく企画も出来た。コロナ禍で落ち込んでいる時だからこそ、みんなで力合わせて盛り上げるようなアクションにも繋がったかな。
O:どんな状況でも、“ミューラルで” 盛り上げていきたい気持ちを持ち続けているからこそですよね。
完成した壁を見た、まちの人の意外な反応とは
O:久永さんは、描きたい場所にある壁の交渉から現場のサポートまで携わっていますが、壁を貸してくださるオーナーさんの反応ってどんな感じなんですか?
H:壁のオーナーさんの反応でいうと、最初からミューラルに興味を持ってくれる人って、多くはないんだよね。こっちから描かしてくださいってお願いしている訳だから、「きれいにしてくれるんだったらいいよ」ぐらいだったりするかな。でも、いざ完成した壁を見た時は、反応が全然違かったりする。理由は、事前に確認してもらうスケッチと、実際に壁に描かれた作品とでは、インパクトが違うからだと思う。最初は興味がなかったけど、アーティストさんが集中して描いている所をずっと見てくれてたり、差し入れを持ってきてくれたり。やっぱりアーティストさんの描く姿を見て、反応が変わってきたりするんだよね。
O:描く過程を一緒に見届けるからこそ生まれる、不思議な一体感がありますよね。
まちの人の反応はどんな感じですか?
H:例えば、淀川でやっている淀壁プロジェクトは顕著で、まちの人の反応がめっちゃくちゃ良かった!
O:アメリカから来日したローレンさんが描いている時には、老若男女問わず、すごい多くの人が足を止めて観てましたよね!
H:制作スタート日から「何が出来るの?」ってずっと話かけてくれるおばちゃんとか、近くのリサイクルショップのおばちゃんが毎日、りんごを切って持ってきてくれたり、なんなら昼ごはんを一回おごってもらったこともあったぐらい。
O:初対面の方と、壁を通じてコミュニケーションが生まれたりしている状況って、結構すごいですよね。
H:純粋に嬉しいって思ってくれてるんだと思う。見慣れたまち並みなんだけど、そこにミューラルがあることで良い意味で違和感が生まれるから。「また若い人が戻ってきてくれたら、うれしいわ」みたいなすごいポジティブな声をもらったりした。
初めてミューラルに触れる人を増やしていきたい
O:連平さんがこれからやってみたいことはあったりしますか?
H:ミューラルがないような所にもどんどん行きたいって思ってる。富山に行った時には、ミューラルを初めて見たおばあちゃんが「生きてるうちに見れて良かったわ」って話しかけてくれたんだよね。ちょっと人生に触れた感じがして、嬉しい気持ちになったんだよね。ミューラルがないまちで、でっかい壁に描けたら、アーティストさんもたぶんテンションが上がると思うし、これからもミューラルに初めて触れる人を増やしていけたらいいなと思うな。
【好きな曲】
ヒップホップを好きになるきっかけをくれた曲。媚びないオリジナルの美学がかっこいい!