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ミューラル(壁画)を様々な視点から紹介するメディア

“まち“の芸術品。社会をキャンバスに変える「ミューラル」とは?



突然ですが、みなさんはこの「壁」をみて何を思いますか? おそらく、多くの方々にとってはただの「壁」にしか見えないかもしれません。しかし、実は私たちWALL SHAREにとっては、とても”良い壁”に見えています。


Mural by FATE & SUIKO

そう、先ほどまで無機質に感じられた壁は、まちに描かれる巨大な壁画「ミューラル」を制作する上で重要な”キャンバス”となります。

*ミューラル=壁画の英訳の意。所有者に許可を得た上で描かれたもの。




目次




ミューラルとは

ミューラルは、現在のところ日本では珍しく、鑑賞する機会は数多くありません。しかし、海外では身近な存在として観光資源の一端を担っていたり、治安が悪かった地域もミューラルによって新たに息を吹き返していたりするなど、人々の注目を集める存在となっています。


Mural by TITI FREAK

「アート」と聞くと、少しハードルが高く感じたり、よくわからない、といった気持ちが先行したりしますが、まちというパブリックな空間に描かれる「ミューラル」は誰もが気兼ねなく鑑賞することができます。 制作風景に思わず足をとめたり、作品を背景に写真を撮るなどのアクションを引き起こすミューラルは”アートを楽しむきっかけ”を生んでいるとも言えるのではないでしょうか。


Mural by MIZYURO

さて、そんな魅力的なミューラルの世界ですが、もう少し深く掘り下げてみましょう。 この記事を読むことで、あなたも先ほどの壁が「良い壁」に見えてくるかも?


* ”良い壁”の条件は個人によって異なりますが、視認性やサイズ、窓が少なくフラットであることなどがポイントとして上げられます。


ミューラルに興味を持つと、まちの壁面がいかにキャンバスとしてのポテンシャルを持っているか、という視点で見えてくるようになります。





グラフィティとは

ミューラルについて理解を深めるうえで「グラフィティ」について少しだけ触れておきたいと思います。



グラフィティとは、この写真のように一見なんの脈絡もなく描かれた「落書き」のことを言います。しかし、実はミューラルとも関係が深く、一つの文化形態の総称として捉えられています。 グラフィティの起源は諸説ありますが、1960年代のアメリカ(フィラデルフィア)から徐々に発展していったとされており、当初はマイノリティが持つ社会的・政治的な主張などを街の公共物に書く行為として行われていました。そして、その現象は徐々にグラフィティ独自の「文化」として形成されていき、アートの領域にまで広がっていくこととなるのです。



グラフィティが持つ独自の文化の一つとして「他者が書き落としたものに対して上書きを行うときは、より優れた作品を描かなければならない」という慣習があげられます。

これは、”非合法”という性質上、費やすことができる時間が限られている他、描ける壁も多くはないことから、表現を武器として自身のキャンバス(壁)を守るために生まれた掟のようなものでした。



そうした文化を通し、磨きあげられた独自の表現方法(スタイル)は芸術ともされ、ミューラルとして”合法的”に描ける機会へと結びついていきました。 グラフィティをバックボーンとする著名なアーティスト(バンクシーやKAWSなどもその中の一人)が数多く存在するように、その現象をただのヴァンダリズム(破壊行為主義)として位置付けるのではなく、新たな視点を持つことで芸術に繋がる可能性を見出すことができるのかもしれません。




ミューラルの楽しみ方

ミューラルの表現方法はグラフィティに類するものだけではなく、アーティストによって様々です。その中でも、ミューラルを描くことを自身の主戦場としているプロのアーティストは「いかにその空間に根付くか」という視点を意識して作品を構成しています。


Mural by TITI FREAK

オフィスや店舗など一部の人々が利用する限定された空間においても同様ですが、外壁に描かれるミューラルは、そのまちに住む人々が慣れ親しんだ景観を変えることであり、ある種の責任感を伴った行為と言えます。


そのため、アーティストは地域の文化や風土に寄り添ったモチーフを採用したり、壁に対する空の見え方や太陽との位置関係、草木の入り具合などの”空気感”をとらえながら作品を構成しています。だからこそ、作品は「まちの芸術作品」となっていくのです。


Mural by TITI FREAK

地域に寄り添って描かれる「ミューラル」は、どんなテーマで描かれたのか、なにを伝えようとしているのか。その背景に想像を巡らせながら鑑賞することで、より一層楽しむことができるのではないでしょうか。




ミューラルがもたらしたまちの声

本稿では、ミューラルが描かれることで生まれた、まちの声についてご紹介をします。



この建物は「レッドカーペット」というライブハウスとして運営されていましたが、白一色の壁面は少し寂しく感じられ「近寄り難い印象があった」と地域の方々は思っていたそうです。



Mural by Lauren YS with BAKIBAKI

そんな中、大阪市淀川区にミューラルを増やすプロジェクト「淀壁」のキャンバスとしてご提供をしていただけることに。地域の子どもたちをはじめ、老若男女問わず興味津々で制作風景を見つめています。海外から参加をしたアーティストもいましたが、制作中はまちのヒーローかのように背中を見守られていました。


Mural by Dragon76 with BAKIBAKI

国内外問わず活躍するアーティスト達がそれぞれのスタイルで描いた作品の完成です。レッドカーペットの名前に合わせ、背景を彩る柄は赤色に、壁面の通りが「ツバメ通り」と呼ばれていたストーリーから急遽ツバメも描かれることとなりました。



実際に作品を見たまちの方々からは「またツバメが戻ってくると嬉しい」「この道を通るのが楽しみになった」など、様々な温かい声が聞こえてきました。


Mural by HITOTZUKI

こちらの作品は、解体されることが決まった神戸市庁舎をミューラルで彩り、アートに触れるきっかけを創出したいという思いから実施された「Kobe Mural Art Project」にて描かれました。



Mural by HITOTZUKI

制作中は「はじめて見た」「何を描いてるんだろう」などの声をきっかけに、馴染みの無い方々の間でコミュニケーションが生まれるなど、ミューラルならではのアクションが起きていました。



Mural by KAC

また、作品の完成後にはまちの方々へアンケートを実施し、実に80%以上が「ミューラルを増やすべき」という回答をしました。現在のところ、日本においてミューラルは馴染みが薄いとされていますが、実際に描かれた際はポジティブな声や反応で溢れています。ミューラルが人と人を繋ぐコミュニケーションのツールとなることも大きな魅力の一つです。




ミューラルの将来像

さて、これまでご紹介をしてきたミューラルについてですが、最後は今後の未来についてご一考いただけると嬉しいです。


先述したように、ミューラルは地域のアイデンティティを形成するうえで、重要な「まち」の資源となっています。これはミューラルに限らず、まちに存在する芸術作品に対しても同様のことが言えると考えています。


ニューヨーク市では、パブリックアートの制作に27億円を支援するプロジェクトが実施され、まちにアートがある意味を示しました。ここにはミューラルを含む芸術文化が社会にとって必要なものであることや、アーティストに対して経済的な制限をなくすことで生まれる自由な表現だからこそ芸術としての力が発揮される、という意図が鑑みえます。


日本の話をすると世界のアート市場において、3%ほどのシェアに留まっており、これは先進国の中でも最低レベルとされています。市場が活発な国といえばアメリカや中国、イギリスが多くの割合を占め、フランス、ドイツなどが続きます。これらの国々と日本は何が違うのでしょうか。


その課題は限りなく挙げられています。しかし、私たちWALL SHAREはこれからもミューラルを増やし、人々がアートに触れるきっかけを創り続けます。 皆さんも、まちでミューラルを見かけたときには、どんなメッセージやストーリーが隠れているのかなどを自分の視点で楽しみつつ、気軽に楽しみながら「アート」について考えてみませんか。


Mural by DOPPEL



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